コメ作りの最初の作業は苗作りにあります。その初めの作業は、塩水選・温湯消毒という種もみの処理です。みなさんが目にする、田んぼに植わっているイネは、直接田んぼに種を蒔いてああなるのではなく、一般的には「田植え」という移植作業の後にあの形になります(直接種を蒔く農法もあります)。田植え前には、イネの苗を作らなければなりません。そんな苗を作る作業について、備忘録を兼ねて解説していきます。
種籾を処理する理由
苗に使用する種籾は、昨年収穫した籾から使用します。その籾を種まきして苗が出来ますが、最初の作業は種まきではありません。ちょっと地味ですが、重要な作業がいくつもあるのです。
まずは種もみの処理を行う理由について紹介します。
良好な種もみを選別するため
「良好な種もみを選別すること」。塩水選という作業でこの行程を行います。塩水を作り、水の比重を高くします。プールより海水のほうが浮かびやすい原理と一緒です。比重は、比重計を元に塩を入れたり、入れ過ぎた場合は水を入れたりして調整します。すると、重いものは沈み、軽いものは浮かぶようになります。
そうして、中身の詰まった良質な(=重い)籾は沈み、中身が充実していない(=軽い)籾は浮くわけです。浮いた籾を取り除けば、種籾の中でも良質な籾のみを種に使用することができます。非常に重要な作業で、これをやる・やらないで収穫量は1割以上変わるとも言われています。
病気になりにくいイネにするため
イネの病気には様々なものがあります。いもち病や馬鹿苗病、籾枯最近病、イネシンガレセンチュウ等、挙げだせばキリがありません。病気の原因となるカビや細菌を除去するために、種子をお湯に漬け込む、「温湯消毒」という手法があります。
馬鹿稲病、いもち病、苗立枯細菌病に対しては、薬剤を使用したときと同程度かそれ以上の効果を発揮するとも言われています。
イネの病気をちょっと紹介
病名 | 発生条件 | 症状 |
馬鹿稲病 | 高温・多湿の育苗箱内で繁殖しやすい | 苗の不発芽、枯死 |
いもち病 | 胞子による空気伝染、低温多雨、種籾で越冬 | 葉が枯れる・穂がならない |
苗立枯細菌病 | 不適切な温湯消毒・塩水選、不適正な水・温度管理 | 苗の変色、生育不良になり枯死 |
種もみの処理の手順
塩水選 優秀な種を選別
塩水を作り籾を水に入れ、比重の重い優秀な種と、軽く種に向かない籾を選別します。
軽い籾は病気に侵されている可能性が高く、播種後に病気が苗箱の中で蔓延する可能性があります。
使用するもの
- 種もみ(苗箱30箱分、約3.6kg用意)
- 比重計
- 大きい鍋かバケツ
- ざる等、浮いた籾を取り除く道具
- 塩
- はかり
手順
- 大きい鍋かバケツに水を入れ、塩を加える。比重1.17の塩水を作る。
私の場合は1.17を作るので、約10ℓの水に対して塩2.3kgを加えます
※比重1.13や1.15で塩水選を行う場合もありますが、私は1.17で厳しく行っています。 - 少しずつ籾を塩水に加え、浮いてきた籾をざるなどで掬い取る。
- 浮いている籾を除いたら、沈んでいる籾を取り出し、水道水で籾についた塩を流す
温湯消毒 イネの病気予防
使用するもの
- 大きい鍋
- コンロ
- 水温計
- 塩水選後の種もみ
手順
籾を入れる前はちょい高温 籾入れて60℃。撹拌して水温を一定に 消毒後は水でよく洗い、籾を冷やす
- お湯を鍋で沸かす。冷たい種もみを入れるため65℃~64℃くらいを作る。
- 籾を入れて63℃~58℃を目指す。鍋を直接火にかける場合、鍋底の水温が高くなる可能性が高いので、よく撹拌・籾が鍋底につけないようにする。自分の場合はやかんに湯を沸かし、差し湯する。
- 7分お湯に浸け込む。10分行っても効果はあまり変わらないらしいが、7分で終了。
- 消毒後は湯から籾を取り出し、速やかに冷水をかけ流し籾を冷やす。
作業のまとめと一言
ここまでで、優秀な種籾を選抜する塩水選と、病気になりにくいイネにするための温湯消毒の作業は終了です。方法は調べると色々と見つかります。また、あなたの栽培するイネの品種や田んぼの環境によって、塩水選の比重が変わったり、適切に薬剤を使用する必要性が出てきます。
色んな情報をもとに、実践したい農法に沿った籾の処理の方法を試してみましょう。
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