芝の植え付け ノシバと山地酪農の関係性について

薫る野牧場

今日の作業は山への芝の植え付け。

頻繁に行う作業でも無いので、備忘録ついでに芝と酪農の関係について書きます。

芝を山に植える理由

山地酪農で欠かせないのが、芝。主に「ノシバ」という日本在来の芝を我々は定着させようと目指しています。

なぜ芝が必要なのかというと、

  • 牛のエサになるから
  • 強い山づくりのため

以上の2つ。重要とされているのは2点目の山づくりです。

ノシバの根っこの話

ノシバの茎は匍匐茎ホフクケイ)と言われるものです。
地面を匍匐するように、這うように茎を伸ばします。
そしてその地中には、30cmほどの根をびっしり張るのです。

平成28年、岩手県の中洞牧場(山地酪農の聖地的な牧場)に台風10号がやってきました。牧場のある岩泉町では甚大な被害がもたらされましたが、牧場のノシバが植わっていた場所では被害が無かったようです。地面にびっしり張る茎とその根のおかげともいわれています。

また、ノシバの持つ保水力(水を地面で蓄える力)が天然のダムとなり、少しずつ水を排水することで、被害が軽減されたという話も聞きました。

薫る野牧場の状況

現在の山の状況はこんな感じです。

大きい牛も埋もれてしまうような大きな草

この山では以前神奈川県が大野山乳牛育成牧場という県営の牧場を運営していました。平成28年3月まで50年程の間牧場をやっていましたが、その後はそのまま。厳密に言うと、県が牧場の撤退を決めるごろから、現在の牧場一帯は放置されていました。

少しずつ芝を優勢にするために

現在の植生は、カヤとチカラシバという植物が優勢。時折アザミ(葉がトゲトゲしているやつ)がいたりします。山地酪農の実現に向けた山づくりのなかで、芝がこの山には少ない、といいますか、ほとんど無いのです

昨年放牧地内にノシバの種をまき、牛の糞を介してある区域で定着していますが、まだまだこれからという感じ。

今回植えた芝

今日は昨年開拓して作った道に芝を植えます。道は草なども生えておらず、さらさらと土が流れる一方。これじゃせっかく作った道が崩れちゃう!というわけで、芝を植えます。

神奈川県の畜産技術センターの方が作っている「ムカデシバ(センチピードグラス)」となかほら牧場で大活躍した「ノシバ」を植えました。センターの職員さんに感謝です。

ムカデシバという名称は、和名、属名、俗称として紹介されています。
センチピードグラスという名称の方が、一般的に広く使われています。
 

ムカデシバ(センチピードグラス)

こちらがムカデシバ。ムカデといえども、あまりムカデっぽくはないです。

別名のセンチピードってなんだ?と思い、調べてみると、

「ムカデ」ということらしい。そりゃそうだ。

ムカデシバの特徴

地面に這って茎が伸び、根を張る匍匐茎。びっしり覆いつくすため、雑草の発生も抑えてしまうようです。
また様々な自然環境にも適応する、強い植物です。勿論牛も食べます。

ムカデシバは寒さや暑さ、乾燥に強く、養分が豊富でない土地でもよく育つようとか。
公園の芝、道路の法面にも採用されています。雑草が生えにくくなる性質上、田んぼの畔で導入が進んでいるようです。

ノシバ

日本在来の芝として、代表的な存在。日本の気候に最も適している芝。

公園や、ゴルフ場のラフ、寺社仏閣などでも見られます。

ノシバの特徴

こちらもムカデシバ同様、匍匐茎。匍匐するように地表には茎が伸び、地中にはびっしりと根を張り、地中の保水力をも高め、これにより土砂災害も防ぐため、中洞牧場の中洞正氏はこの事象を「天然のダム」と称しました。

匍匐茎が地面をびっしりと覆いつくすため、放牧地がノシバの絨毯のような状態になり、他の雑草の生育を抑えることもできます。これはムカデシバとも共通していますね。

また、再生力が非常に強い植物なので、牛が食べてもすぐに次の草が生えてくるようです。

植え方

ざっくりと植え方。

こんなところに植えます。

大野山を含む一帯の山は、富士山が近いため、火山噴出物を含むさらさらとした土が多いです。ここもまたさらさら。5cmくらいはこの土の層で、水はけも非常に良さそうで、大雨が来るたびに流れてしまわないか心配になります。

掘る

まずは植えるために土を掘ります。

さくっと5cmほど。こんな感じです。

土に置き、うまくつけ~と念じる、押す

念じます。

いくら肥沃とは言えない土壌でも育つと言われても心配になるくらい、さらさらとした土。

穴を掘ったところにそっと芝を置き、うまくつけ~そだて~と念じます。

覆土 土を被せる

上から土をかけます。この時も念じましょう。

今回植えた芝は葉までしっかり伸び、根もしっかり張っている状態のため、
覆土したとき葉が見えるくらいに植えていますが、苗の状態により植え方は異なります

豆知識 ムカデシバとノシバの共存

ムカデシバとノシバは特徴が似ています。
条件が良いとは言えない、肥沃で無い土地でもつきやすい。そんな2種類の芝は共存できるのでしょうか。

これはうまく定着してからしか図れませんが、聞いた話によると、共存はできないとのことでした。ノシバのほうが芝として優勢みたいで、お互いが繁茂して競争が起きた時には、ノシバが勝ちムカデシバはなくなるようです。

そんな検証も含めて、この放牧地がどうなっていくか楽しみです。

植え付け作業のまとめ

今日は芝を植えましたが、まだまだこれからという感じです。これから芝以外にも、草が大変よく育つ季節になっていきます。定着しても、雑草に負けてしまうかもしれないし、そもそも定着しないかもしれません。

ただ、山地酪農を行う以上、芝は必要不可欠!芝とは良い関係性を築きたいですね。

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