私は大野山の麓に住んでおり、「この時期は登山客が多いな~」ということがよく分かります。
今年は登山客が例年に比べて2~3割程多いと感じています。
4月20日(日)、山北町の大野山には多くの登山客、車での観光客が見受けられました。
大野山山頂の一部の駐車場はほぼ満車状態。20台~30台の車があり、1台に平均2人乗っているにしても、50人以上。登山客も昼の遅い時間で50~60人以上とすれ違いました。
その光景にちょっとした恐怖を感じたので、近々登山を計画している方に考え直して貰うべく、今回の記事を書きました。
ハイカーの皆さんは、だれにも迷惑をかけなければ良いと思っているかもしれませんが、どんなに低い山でも危険と隣り合わせだという自覚を持たなければなりません。登山の技術や装備、事前の準備の問題以前に、日本では現在「緊急事態宣言」が発令されており、全世界でも新型コロナウィルスの脅威と戦っている最中。また、登山には公共交通機関の利用、地域の飲食店や小売店の利用が付き物。客足が遠のく中、なんとか開けているお店にとってもリスクです。
登山ならたぶん大丈夫、と思っているあなたの行動が、
誰かに迷惑をかけるかもしれません。
このタイミングでの登山について、少し考え直してみましょう。
日本の新型コロナウィルスの現況(2020年4月20日現在)
現在も国内の新型コロナウィルスの感染者数は増え続けています。
地域別で見ますと首都圏を中心に、特に東京では多くの感染者が報告されています。神奈川県でも各自治体の感染者数の統計が出ており、横浜市(感染者数:224人)・川崎市(164人)はおろか、私が住む山北町の近く、小田原市や開成町でも感染は確認されています(新型コロナウイルスに感染した患者の発生状況)。
緊急事態宣言が発令されました。
医療資源は枯渇寸前、病床も足りているのか足りていないのか、現場の方々の声と報道では大きな差があるとも言われます。政府発表でも医療崩壊を招きかねない状態にあるとのことなので、緊迫した状態が続いているに違いありません。
「不要不急の外出は控える」ことと、「3つの密(密閉・密集した場所、密接な場面)」を避ける事。都市部から医療態勢が整っていない地方への移動を控えることなどが発表されています。
人にうつさないために、外に出ないこと。
人からうつされないように、外に出ないことが必要です。
答えは、家にいることです。非常にシンプルで簡単な話です。
この時期の登山者がもたらすいくつかのリスク
まず、気になる記事があったので引用させて頂きます。
コロナ危険別「行っていい場所・ダメな場所20」
【行っていい度:○】
◆登山、キャンプや海辺散策
https://toyokeizai.net/articles/-/341608?page=3 (東洋経済オンライン コロナ危険別「行っていい場所・ダメな場所20」)
暖かくなってくるとアウトドアに出かけたくなりがち。徳田室長は「登山、キャンプ、海辺の散策は屋外で混みにくいのでまず大丈夫」とし…
こんな記事もあります。キャンプ・散策は良いと思いますが、登山はいかがなものかと思います。諸々の理由は後述します。色んな情報が出回っていますので、いくつかのリスクと照らし合わせて考えてみましょう。
①登山者自身に潜むリスク
入山中に発症する可能性はゼロ?
体力の維持や、リフレッシュの為に万全の対策をした上で登山をしたいという方は多いと思います。
しかし、感染後、症状が出るまでの潜伏期間は最長でも2週間という報告があります。ここ2週間で感染が拡大した地域に行きませんでしたか?実はすでに感染していて、入山後に発症という最悪のケースもあり得ます。
あなたと一緒に山を登る家族・友達は感染者じゃないと言い切れますか?
仕事も休み、子どもも学校が休みで出かけたい気持ちは良くわかりますが、入山中に発症し症状が悪化したり、介助する他の方への感染リスクまでもあります。あなただけの話ではないのです。
じゃあ一人で登山すれば?
という話になりますが、万が一山中で一人の時に発症した場合、知らず知らずに症状が悪化し取り返しのつかない場合に陥る可能性があります。
登山計画は立てた?無理な登山は体力の消耗=抵抗力も低下
登山と言えども、色々あります。富士山に登るのは勿論登山。標高200~300mくらいの山に登るのだって、立派な登山です。登山には事前の計画が不可欠。ちょっと油断して、簡単に登れるからとりあえず最寄りの駅まで行って、パンフレットでも見つけて登ってみよう!という気持ちは命取りになります。下山時に日没を迎えそうになるような無理な登山は、動揺や焦りを生み、体力の消耗に繋がります(=抵抗力の低下)。
また滑落や遭難といった事故に発展し、救助隊や逼迫している医療機関にも影響を与えかねません。
周辺住民へのリスク
地元の方が利用する交通網を登山客が利用すること
私の住む山北町には御殿場線が2両又は4両編成で走っています。周辺住民にとっても生活や通勤に欠かせない路線です。特に車の無いご高齢の方々は電車でお買い物に行かれる方もいらっしゃいます。
電車やバスなどの公共交通機関は「密」な空間を作りやすく、感染が広まるにはもってこいの場。
登山に行く際に下車する駅は、たいてい郊外か、結構な田舎(=新型コロナウィルスの患者が現状少ない地域)。山北町は高齢者が多い町です。病院も患者を受け入れる許容量が限界に近付きつつあると言われています。感染を広めるリスクを考えれば、公共交通機関を利用して登山に行くことは賢明ではありません。
登山前後に何も買わない?どこにも寄らない?あらゆる接触がもたらすリスク
登山前と下山後、何しますか?
登山前は最寄りの駅や、登山口近くの駐車場に行く前には、近くのコンビニによって買い物をしたり、自動販売機で飲み物を買ったり。下山後は、飲食店で軽くご飯を食べたり、スーパー銭湯に入り、汗を流したり。地域の経済を回してくれることは非常にありがたいのですが、ここにもまた様々な接触があり、感染の機会が潜んでいます。
地元経済が回らない (=登山客も最大限楽しめない)
飲み物やお昼ご飯は自宅近所で買う。登山口近くの駐車場までマイカーで行く。登山前はどこでも買い物をせず、下山後は駐車場に戻りそのまま帰る。周辺住民を感染のリスクに晒さない、最善の行程かもしれません。しかしこれでは、地元の経済が一切回りません。
あなたの大好きな登山は、あなたと山があって成り立っているわけでは無いと思います。登山客に喜んでもらうために登山道やトイレを清掃してくれる人たちがいること、登山後においしいビールが飲める飲食店やお土産などを買える小売店があることを忘れてはいけません。
そして、私の住む山北町にある多くの飲食店は、新型コロナウィルス拡大防止の為休業中です。
どうしても山に登りたい!という方には是非終息後に来ていただきたいです。山北町には登山前も登山後もおいしいおつまみやソフトクリーム、温泉など楽しみが沢山あります。今来て頂いても最大限お楽しみ頂くことができないと思います。
医療機関・救助隊のリスク
救助隊員への感染リスク
現在、新型コロナウィルス感染により、世界的にも登山活動に影響を受けております。
https://sangakui.jp/information/post-1111/?fbclid=IwAR3ycWamuZXRNz3pDM6a0d6596j6zFmk7QRnRhWfe5TcRaTDly4Wlaf85-I(日本山岳救助機構)
イタリアでは山岳救助パイロットが感染し、12日間集中治療室で1ヶ月の治療を受け生還しました。
カナダでは、要救助者が感染しており、救助にあたった隊員が業務停止、国立公園が閉鎖となりました。
海外の事例ですが、こんな話もあります。万が一ケガをしてしまった場合、あなただけではなく、救助隊員にも感染のリスクがあるということを忘れてはいけません。いくら症状が出ていなくても、感染していても無症状の場合もあります。救助にあたる人員、搬送先の医療資源には限りがあります。医療崩壊の一助になってはいけません。
限られた医療資源に影響を与えてしまうリスク
もしも大怪我をして人工呼吸器やECMOを使った集中治療を受けることになればCOVID-19の治療とオーバーラップし、限りある医療資源を大きく逼迫しうる。
https://mag.yamap.com/12641 新型コロナウイルスが登山に与える影響は?国際山岳医・けんじり先生特別寄稿
万が一、今すぐ手術が必要なほどの大怪我をしてしまった場合、あなたを受け入れる病院へは負担がかかり、搬送先では更なる感染リスクも存在します。登山は個人でも行えるスポーツ活動ですが、社会的な責任が伴うということを忘れてはいけません。
結論
今は登山を控える
これに尽きると思います。
あなたの命も大切ですが、他人の命も大切ではありませんか?
自宅にいる時間が長くなっているかと思います。実のところ私もこの期間に丹沢の山々を制覇しようかななんてことも考えていましたが、事態が悪い方へ進み、私の生活圏にある山にも多くの登山客が押し寄せていることから、得も言われぬ危機感を感じました。
我慢できないから山に行って気晴らしをしよう!というのは、今一度考え直して頂けませんか?
今は登山計画を練ったり、ネットショッピングで新しいギアを探したり、登山紀を読んでモチベーションを高めたりと、来る終息後の山開きの日までの充電期間としましょう。
参考文献
毎日更新中】グラフ|新型コロナウイルスCOVID-19 日別の新規感染者数・死亡者数と死亡率の推移
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