種籾の処理が終わり、いよいよ種まき。
前回の作業についてはこちらの記事をチェックしてみてください!
これまでの作業は「種もみの処理」でした。
今回からはいよいよ苗作り本番!という感じになります。
種まきは大規模農家では機械を使って作業することがほとんど。
何百枚もの苗箱を作らなければいけないのですから、使って当然です。
ですが、私は毎年30箱分の苗しか作らないので、機械を導入するほどでもありません。
私が管理を行っている1反の田んぼでは、苗箱は30箱あれば、十分です。
なので今回は機械を使わない、極めて原始的な播種作業の流れをまとめていきます。
苗は「自家生産」か「注文」
大規模農家で使われる播種機には色々あります。
50万円近くするものから、2,3万円で手に入るものもあります。
勿論、それなりの値段のする機種は多機能で、播種作業のほとんどを機械がやってくれたりします。人間は播種機に苗箱を乗っけて、機械の操作・調整を行うだけとか。
私の周りの農家さんの多くは、苗を農協に注文されている方が多いです。農協が作ってくれるのですから、だいぶ楽です。1箱送料込みで1000円しないものが多いです。
私も農協苗を考えましたが、農薬・肥料を使用せずにイネを育てる上では、育苗から自分で行ったほうが安心・安全なので、自分で苗から用意しています。さらに農協の苗には「農協の苗としての育て方」があります。指定の農薬や肥料を推奨されます。
苗にはいろいろある【稚苗?中苗?成苗?】
私は「成苗」という苗を育てるので、「成苗用の苗箱」を使用しています。
左の写真が成苗用。こんな感じで穴がたくさん空いているのが特徴。
右の写真が間違って買った中苗用の苗箱。穴の数が少ないですね。
そして、稚苗・中苗・成苗それぞれの特徴を一言で言うと、苗の大きさが違います。稚苗は勿論小さくて葉も少ない。成苗は背丈があり、葉も4,5枚つけています。
播種量で出来上がる苗が変わる!
前述した「稚苗・中苗・成苗」は育苗箱1箱に何g種籾を播くか(播種量)により作り分けることができます。
苗の種類 | 播種量 | 葉の数 | 育苗の日数 |
稚苗 | 150g前後 | 2~2.5枚 | 20~25日 |
中苗 | 100g前後 | 3.5枚 | 30日 |
成苗 | 50g前後 | 4.5~5枚 | 35~40日 |
勿論、育苗の日数は気候によって前後します。
気温の上がらない、日照りが無い日が続くと育苗には時間がかかります。
温暖な地域では稚苗が使われます。苗は稲の生育段階的にまだまだ子どもの段階。低気温は稲の生育にとってリスクです。なので寒冷地では田植え後から収穫までが早い成苗を植えるケースが多いようです。
播種 床土を作り、イネの種を蒔き、覆土する
機械を使わず行う播種作業です。いかに均平に、土を敷き詰め、偏りなく種を均等に蒔くのが大事な作業。集中力が極めて重要な作業です。この作業をきちんと行うと、以後、田植えまで40日近くの育苗期間、多少楽することもできます。
例えば覆土がよくできていないと、種もみが浮いてきてしまったりします。そうすると再度覆土をしなければいけなくなったりします…。とはいえ、人の作業には限界があります。丁寧になり過ぎない程度に作業を行いましょう。
使用するもの
床土 | 成苗用有機元肥×赤玉土・焼土(無肥料の土で代用可) |
苗箱 | 成苗用の苗箱を30箱 |
覆土 | 焼土等、なるべく粒子の細かい無肥料の土 |
種籾 | 催芽処理を終えた種籾。1箱に60g蒔くので×30箱で1,800g以上 |
完成図はこんな感じです。下から床土・種籾・覆土です。
床土・覆土の厚さには栽培方法によって様々な方法がありますが、私はこのやり方でやっています。
作業の手順
①床土の用意
床土(とこつち)とは、苗箱に詰める土のことです。床土は色んなものがあります。
元肥1袋に対して無肥料の土80ℓを混合 そのまま使える市販の床土。今回は不使用
私は床土に、「成苗用有機元肥」と赤玉土(なるべく細かいもの)・焼土を混ぜて作ります。赤玉土と焼土、無肥料の細かい土で代用可能です。割合は元肥30ℓに対して無肥料の土80ℓ。有機元肥は1箱辺り窒素4g・リン酸6g・カリ3gになるように混和されます。育苗中の追肥は不要。
まずはこの元肥と無肥料の土をひたすら混ぜます。満遍なく混ぜます。
よく混ぜる。コンクリートミキサーがあると早い 水をかけ、だいたいこんな感じ
ある程度混ぜたところで水分を加えます。手で握って固まる程度ができたらOK。
これで一晩寝かせると良いようですが、時間が経ちすぎると、糸状菌が発生し土を硬くしたり、吸水性が悪くなることがあるそうです。1日以上置いて置かないようにしましょう。
②苗箱に床土を詰める、なるべく均平に
苗箱に床土を詰めます。土を詰めたらすぐ播種作業に移るのが良いとされています。前述しましたが、苗箱に土を詰めてから時間が経つと、糸状菌の発生や土が硬くなることがあります。
床土は苗箱の底から2㎝くらいにまで詰めます。苗箱には大体2㎝のところで印がついています。こんな感じに。なので、目視でもある程度2㎝の床土は作りやすいかと思います。
③種を蒔く
私は苗箱1箱あたり60g以下の薄蒔きを実践しています。これで成苗を作ります。
因みに、40gで蒔くべきという文献も存在しますが、発芽揃いに自信がなかったので今回は60gで統一しました。
当然の話ですが、種が1箱に対して多ければ、それぞれ土・水から養分を奪い合いが起きます。薄蒔きであればあるほどそれぞれの種に十分な養分が行き届き、葉が多く背丈もある「成苗」が出来上がる訳です。
箱に均等に蒔くのはめちゃめちゃ難しいです…。偏りができないように集中して作業します。
④ベニヤ板で鎮圧し潅水
苗箱の大きさにカットした板で苗箱に抑えます。覆土後に種が浮かないために鎮圧します。床土がしっかり2㎝敷き詰められているかもチェックすることができます。
そして水をやります(潅水)。覆土をした後に潅水をすると、様々な不都合がおこるそうです、この理由はあまり分かっておりませんので、詳しい方教えてください(笑)
⑤覆土(ふくど)
覆土用の焼土。カインズで売ってます
最後に土を被せます。覆土は0.5㎜を目安に行いますが、覆土のし過ぎは禁物。種もみが見え隠れする程度の覆土が推奨されています。実際は0.5mmも被せてないかもしれませんね。
覆土に主に使う土はこちら。近所のカインズで売っているエス・ケー焼土。床土にも混ぜて使用しています。細かい土で、使い勝手が良いです。なにより「覆土用」と書かれているので安心です(笑) 値段が若干高いですが、安心を買っているということで、毎年使わせて頂いております。
来年はこれを購入したい 育苗箱ならし板
育苗箱のならし板です。
苗箱に2㎝の厚みで床土を詰められているのか、毎回心配になってしまいますが、この道具があればそれも解決。土を平らに均すことも可能。正直今年、これと同様のものを作ろうと思っていましたが、作るまでもなさそうなので、今すぐ注文しようと思います。
播種作業はここまで。全行程、2人で2時間半~3時間!
これにて播種は終了です。次回は出芽、そしていよいよ苗になります。
芽がしっかり出るか、非常に心配になります。とりあえず芽が出てしまえば、苗になって、田植えが終わってしまえば、あとは収穫するだけです。
「苗八作」とはよく言ったもので、この時期の作業は本当にドキドキさせられます。
さて、無事に芽はでてくれるのでしょうか。次回の記事もお楽しみに。
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